アヴラム・デイヴィッドスンが1970年代半ばからおよそ10年間にわたって書きつづけた〈エステルハージィ博士〉連作は、彼の代表作のひとつである。 時は20世紀初頭、バルカン半島中央部に位置する架空の小国スキタイ=パンノニア=トランスバルカニア三位一体王国を舞台に、希代の大博士エンゲルベルト・エステルハージィがさまざまな事件を解決していく。その内容は、怪奇趣味濃厚な探偵小説(というより、ほとんど捕物帖)、あるいはエキゾティックかつ博覧強記な幻想小説というべきもので、デイヴィッドスン以外には書き得ない唯一無比の作品群である。実際、1975年にまとめられたThe Enquiries of Doctor Eszterhazyは、1976年度国際幻想文学大賞を受賞しているほどだ。 80年代に入って、デイヴィッドスンはエステルハージィ博士の若き日を描きはじめた。これら新作短編を加えて、1990年には決定版ともいえるThe Adventures of Doctor Estzerhazyが出版された。 ハンガリーにはエステルハージという姓の侯爵家が実在した。ハイドンのパトロンだったことで有名で、エステルハージ・ニコラウスはノイジートラー湖畔に歌劇場とマリオネット劇場を持つエステルハージ宮殿を建造し、ハイドンと楽団員を連れて、年間のほとんどを過ごした。ところが、金銭上の問題から、楽団員の家族を同行させなかったため、不満が爆発。そこで、ハイドンが侯爵に直訴するために書いたのが「交響曲第45番・告別」である。 (以上、「セカンドクラスの添乗員・未来(みく)の部屋」を参考にさせてもらいました。記して感謝いたします) ■単行本 ●The Enquiries of Doctor Eszterhazy(1975, Warner Books) ●The Adventures of Doctor Eszterhazy(1990, Owlswick Press)上の増補版 ■収録短編 【01】"The Autogondola Invention" 【02】"The Case of Mother-in-Law of Pearl" 【03】"The Ceaseless Stone" 【04】"The Church of Saint Satan and Pandaemons" 【05】"Cornet Eszterhazy" 【06】"The Crown Jewels of Jerusalem, or, The Tell-Tale Head" 【07】"Duke Pasquale's Ring" 【08】"The King Across The Mountains" 【09】"The King's Shadow Has No Limit" 【10】"Milord Sir Smiht, the English Wizard" 【11】"The Old Woman Who Lived With a Bear" 【12】"Polly Charms, The Sleeping Woman" 【13】"Writ in Water, or The Gingerbread Man" ・EDE=The Enquiries of Doctor Eszterhazyに初出 |